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デジタル病理学とは?

デジタル病理学は病理学の一分野であり、ホールスライドイメージングとも呼ばれます。デジタル病理学では、組織標本の検査を行うためにスキャナでデジタル化します。生検やサンプルの採取方法、検査のワークフロー、治療方針の決定を含む最終報告において異なる点はほぼありませんが、スライドをレビューする段階では大きく異なり、顕微鏡も併用しつつ、ディスプレイと画像表示ソフトウェアを使用してデジタル方式で行われます。

デジタル病理学の重要な要素

デジタル病理学の環境は、標本をデジタル化し表示するための多数のデバイスとツールで構成されます。

スキャナー

標本をのせたスライドガラスを、専用のスキャナによってデジタルファイルに変換します。スキャナの形状とサイズは多岐にわたり、一度に1〜1,000枚のスライドをスキャンできます。この処理によって得られる高解像度デジタルファイルは、最大で10ギガピクセルのサイズになることもあります。

画像表示ソフトウェア

ファイルの作成後は通常、表示と分析に適するように画像のサイズを変更するために、専用のソフトウェアによってファイルを圧縮します。その後、デジタル スライドを ディスプレイで表示できるようになります

ディスプレイ

画像表示ソフトウェアを使用すると、スライド画像全体をディスプレイに表示して、病理医が分析することができます。ディスプレイは顕微鏡と併用するツールとして使用できますが、市場では、デジタル病理学用に設計され、一次診断で使用するための規制当局の認可を取得したホールスライドイメージングシステムも提供されています。これらはフル機能を備えたシステムであり、Barcoが提供するスタンドアロンディスプレイは一次診断に使用できます。

顕微鏡と同様に、ディスプレイは病理医が標本を精査するためのデバイスです。そのため当然ながら、高い信頼性を備え、スライドを最適かつ一貫した画像で表示できる必要があります。

ストレージ

病理医が症例の評価を行った後は、標本を保存またはアーカイブする必要があります。物理的なスライドを専用のスペースに保管するのと同じように、デジタルファイルは情報管理システムまたは特定のベンダーに依存しないアーカイブに保存する必要があります。データを利用可能な状態に維持しなければならない期間については、各地域の法律によって規定されています。

大量のデジタルスライドをオンラインストレージに保存する場合は相応のコストがかかりますが、ビッグデータを集積することでディープラーニングやアルゴリズムが使用できるようになり、それらを通じて特定の疾患に対してより優れたインサイトが得られる可能性があります。

デジタル病理学のメリット

効率性

デジタルスライドにオンラインでアクセスできるため、スライドの処理とアーカイブ化にあたってさまざまな操作が可能になり、主に作業時間の短縮とワークフローの効率化に役立ちます。デジタル技術の活用により、コンサルティングをリモートで行えるようになり、スライドの実物を発送する必要がなくなります。これにより、ワークフローの処理能力が拡大され、セカンドオピニオンをスピードアップできます。

症例の文書化

デジタルファイルではまた、アノテーションをデジタル方式で付加して、病理医が必要に応じて表示/非表示を切り替えられます。このようなアノテーションで特定の領域を強調表示するなどして、症例に関する補足的な注記や、画像そのものに対する注釈を加えることができます。アノテーションはデジタルファイルにリンクされますが、ソース画像自体の内容に変更を加えるものではありません。

遠隔病理学

ライブでの顕微鏡のリモートコントロールなどを利用するアナログ遠隔病理診断は、現在のホールスライドイメージングシステムの前身と考えることができます。診療に関与する専門家やスタッフが様々な場所から、スライドの顕微鏡画像をリモートで確認し、ディスカッションに参加できます。

同じファイルを時間を問わず複数の場所で開いて表示できるデジタル病理学では、リモートでの協議が容易であり、多くの可能性がもたらされます。適切なディスプレイと画像表示ソフトウェアがあれば、異なる場所にいる参加者はデジタルスライドを現場とまったく同じ画像として見ることができます。必要に応じて業務を専門の施設に外注することも容易になります。また、デジタルワークフローでは、病理学医や担当スタッフが自宅やその他の場所で作業するというオプションも選択できるようになります。

Barco digital pathology display

現在の状況

人口の高齢化、がん患者の増加、精密医療の普及により、病理検査の需要は毎年拡大しており、結果として病理医の負荷は年々大幅に増加しています。西欧諸国などを中心に、一部の地域ではデジタルトランスフォーメーションの推進により患者ケアにおける有意義なメリットが日々実現されています。その他の地域でも同様の傾向が加速しています。

コンピューター支援を活用した画像解析

世界各地で病理学者が徐々に不足し始めています。この問題に対する解決策のひとつとして、最新のテクノロジーを活用するデジタル病理学の可能性に注目が集まっています。

大量のデジタル情報を蓄積し、ビッグデータ処理とディープラーニングの技術を利用することで、コンピューターまたはAIを利用した診断ツールの開発に役立てることができます。これらのツールを「第二の目」として活用し、組織標本中の特定のバイオマーカーの認識を自動化および改善できるほか、大量のスライドの分析や分類を実行して特定の異常に関する包括的なインサイトを得るといった用途にも利用できます。このようなメリットは、長期的には、疾患の予測精度の向上につながる可能性があります。

まとめ

デジタル病理学は病理学分野における新しいテクノロジーです。組織標本のガラススライドをスキャナによってデジタルスライドに変換し、画像表示ソフトウェアを使用してディスプレイ上でレビューや分析を行い、デジタル形式で保存します。

デジタル病理学を活用することで、診断と予後評価の迅速化と効率化、柔軟なコラボレーション、適切な形式での症例の文書化を促進できます。デジタルスライドをオンラインストレージに格納することで、ディープラーニングや人工知能によるデータの活用にも可能性が拓かれます。